ねこみみかえで


 ――朝起きると、猫耳が生えていた。

「……困りましたにゃ〜」
「楓ったら、お茶目なんだから」
「お姉ちゃん、可愛い。それ、凄く可愛いよ!」
 喜ぶ姉が一人、妹が一人。
 埒が明かない。

「ふーん。で、何かそうなる心当たりは?」
 至極まともに取り合ってくれるのが梓姉さんだ。
 こういう時には頼り甲斐がある。

 フルフル

「んー、耳と尻尾は兎も角、その手は不便だよなぁ……」

 コクコク

「ん〜」
 結局、話は聞いてくれましたが打開策は見つかりませんでした。
 いい人ですが、あまり役には立たない人です。

 …私、ずっとこのままなんでしょうか?

 耕一さんが急用で東京に戻ってまだ少ししか経っていません。
 またすぐに戻ってきてくれる筈ですが、その時、私はどんな顔をして出迎え
たらいいんでしょう。
 変な女の子になった私など、相手にしてくれるのでしょうか?
 

「にゃ〜(ため息)」
 

 庭の池眺めながらぼんやりと考えていました。
 すると、急に池の水が光を発して輝きだし、
 

「私は池の精」
 と、綺麗な女の人が出てきました。

「突然ですが、貴女にみっつの願いを叶えてあげましょう」

 突然です。
 前触れも無く。
 ちょっと胡散臭い。

「いいえ、怪しくないですよ」

 皆、そう言います。

「先日も、とある方から

 「ひとつ。楓ちゃんに猫耳をつけてくれっ!」
 「ふたつ。肉きゅうと尻尾をつけてくれっ!!」
 「みっつ。語尾に「にゃ〜」をつけるようにしてくれっ!!」

 との願いをかなえたばかりで……」

 ………。
 

  ガラッ!
 

 玄関の方で音がしました。
 

「あ、耕一お兄ちゃん」
「お、初音ちゃん。今、帰ったぞ」
 

 トタタタタタタ……
 

「あ! かえ……」
 

  ドロップキック。
 


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